輝安鉱

輝安鉱

● アンチモンとは
アンチモン(元素記号Sb)は英名でアンチモニー(Antimony)といい、アンチモンはドイツ名です。金属としては最も古くから利用されています。

<特徴>
①銀白色の強い光沢をもつ金属で、表面に美しい花紋状の結晶があります。
②もろいため、打ち砕いて粉末にできます。
③ヒ素と同じく毒性があり、殺菌力もあります。
④溶けた状態から凝固(固まる)するとき、体積が増します。
⑤銅、錫、鉛等と合金にすると硬さが増します。

<用途>
①鉛や銅と合金にして活字、鉛管板、電線用鉛被覆、減摩合金(軸受)として使用
②硬鉛鋳物の原料となり、機械器具として使用
③蓄電池の極版
④合成繊維に加工し、難燃材として使用
⑤高純度アンチモンは電子工業における冷却用半導体金属として利用

● 輝安鉱とは

輝安鉱Stibnite(化学式Sb2S3)は硫化アンチモンとも呼び、アンチモンの鉱物名です。
由来はギリシャ語のStimiで、アイシャドーのことだそうです。古くは、紀元前4000年エジプトの壺にも装飾として使われています。国内では市之川鉱山のほかに山口県の鹿野鉱山(かのこうざん)、兵庫県の中瀬鉱山(なかせこうざん)、宮崎県の四家鉱山(しかこうざん)で採鉱が行われていましたが、すべて閉山しています。現在、世界の三大産出国は中華人民共和国、ロシア、南アフリカ共和国です。

<特徴>
①強い金属光沢があります。
②硬さの度合いを示す硬度は2で、石こう程度の比較的柔らかいものです。
③重さの度合いを示す比重は4.6です。
④溶ける温度を示す融点は546~551℃で、小さいものはローソクの火でも溶けます。
⑤鉱物や硬面はキラキラ銀白色に輝いていますが、長い間空気や光に当てていると酸化して、黒色となり光沢を失います。
⑥結晶は斜方晶系で、柱状、針状、塊状など、種類に富み、これは鉱物中無比のものです。その種類は113種にもなります。

● 輝安鉱の結晶は

市之川鉱山の鉱脈は石墨片岩(せきぼくへんがん)が角礫化(かくれきか・角ばった礫になること)した部分で富鉱体(ふこうたい・採掘の対象となる部分)をつくり、石英と輝安鉱からなる空洞(晶洞)が発達していました。そのため巨大な輝安鉱の美しい結晶ができたといわれています。
<ガマ(晶洞)とマテ(柱状結晶)>
鉱脈は母岩の中を通り、普通は幅が30~40センチメートルくらいですが、時には1メートル前後に達することもあります。
この鉱脈の中に空洞(晶洞)が生じることがあります。マテは、このガマの中にできます。非常に長い年月をかけて少しずつ成長し、大きなものは長さが90センチメートルに達するものもあったそうです。ガマの中では、マテは手で曲げることができるほど柔らかい状態ですが、空気に触れると固くなります

国内の輝安鉱

国内では、西条郷土博物館、西条高等学校、西条農業高等学校、丹原高等学校、新居浜市立郷土美術館、愛媛県総合科学博物館、大三島海事博物館、愛媛大学、徳島県立博物館、大阪大学総合学術博物館、京都大学総合博物館、三重県総合博物館、生野鉱物館、九州大学総合研究博物館、九州国立博物館、東京大学総合研究博物館、国立科学博物館、埼玉県立自然の博物館、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、秋田大学国際資源学部附属鉱業博物館、東北大学総合学術博物館、フォッサマグナミュージアムなどに結晶標本が保存・展示されています。

 

海外の輝安鉱

海外では現在判明されているだけで10カ国、18博物館に見事な結晶標本約40点が展示されています。
国名、博物館名及び所在地は次のとおりです。

①カ  ナ  ダ  ロイヤルオンタリオ博物館(トロント)
②   〃     国立自然博物館(オタワ)
③アメリカ合衆国  フィールド自然史博物館(シカゴ)
④   〃     エール大学付属博物館(ニューヘブン)
⑤   〃     スミソニアン博物館(ワシントン)
⑥   〃     ニューヨーク自然史博物館(ニューヨーク)
⑦   〃     ゴールデンゲイト博物館(サンフランシスコ)
⑧イ ギ リ ス  大英博物館(自然史)(ロンドン)
⑨   〃     地質博物館(ロンドン)
⑩フ ラ ン ス  国立自然史博物館(パリ)
⑪オ ラ ン ダ  国立地質学・鉱物学博物館(ライデン)
⑫   〃     テイラー博物館(ハーレム)
⑬チェコスロバキヤ  プラハ国立博物館
⑭ド  イ  ツ  鉱物、地質学博物館(ドレスデン)
⑮ス  イ  ス  ベルン自然史博物館(ベルン)
⑯ニュージーランド  テムズ鉱物学博物館(テムズ)
⑰オーストラリア  オーストラリア博物館(シドニー)
⑱   〃     ヴィクトリア州立博物館(メルボルン)